西部包括支援センターでは、現役・高齢世代の住民の方へ更なる周知を目的として、数年前から地域のマンションへのアプローチを行っています。そこでまずお世話になるのが管理人の皆様です。まず管理人の方へ西部包括支援センターの存在を認識していただき、そこからマンションの住民自治会に参加して周知活動を行ったり、支援が必要と思われる住民についての相談を受けたり、その方の家に訪問したり等、実際の支援に繋がっていきます。管理人の皆様は、住民と西部包括支援センターを繋ぐ貴重な見守りのキーパーソンなのです。
今回のインタビューは、西部地区内にある約60世帯の住民が居住されるマンションで、長年にわたり管理人業務に従事してこられた納谷(なや)さんです。納谷さんならではの、住民の方々とのふれあいや見守りに関する思いなどを聞かせていただきました。
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<慣れ親しんだ管理人室前にて>
マンションの管理人に就いたのは西暦2000年の年、52歳でした。それからあっという間の20年。当時小さかった住民のお子さんが立派な社会人となり、ご活躍されているのを拝見しますと、時の流れの速さを痛感いたします。
一方で、お元気だった方々が年齢を重ねると共に足腰が衰え、こちらが重い荷物を持ってエスコートする機会が増えてきていることも事実です。そんなちょっとしたお手伝いを繰り返している内に皆様から重宝がられ、私自身も情が湧いてしまう。そんな素敵な信頼関係を沢山築き上げられたことは、本当に管理人冥利に尽きますね。今でも管理人室の前で世間話を楽しまれる方もおられますし、また数年前に私が病気を患った際には、病院の手配を支援して下さった方もいらっしゃいました。
「見守り」については大変辛い出来事がありました。一人ぐらしの高齢者の方の孤独死です。ポストに新聞が溜まっていることから発覚したのですが、二度と繰り返してはならないと願いつつ、職務を続けてきました。長年のお付き合いで、住民の皆様の顔やご家族の有無などは概ね把握しております(無論、守秘義務です)。新聞が溜まっているポストには必要に応じてメモを入れて管理人室で預かり、安否確認もできるようにしていました。同じく一人ぐらしの方の所に悪質な訪問販売業者が入ってしまった時には、消費生活センターに連絡し、クーリングオフ手続きまで支援していただき、事なきを得たこともありました。やはり、一番心配なのは高齢者の一人住まいですね。
様々な住民の方から、近隣とのトラブルなど沢山の話が舞い込んできます。日常生活における嬉しかった話などを伺う機会もあります。皆様とお話をすること自体、私にとっても楽しいひと時ではありますが、あまり立ち入ろうとせず、馴れ馴れしくならず、職務に徹するようにと、一意専心の思いで勤めてきました。見守りをするにしても、この線引きは大切なことだと思います。
西部包括支援センターの事は、以前から町会の回覧板に入っている機関誌を読んで認識していました。高齢者にとって大切な情報だと思いますので、「包括だより」は住民の皆様がいつも目にする掲示板に掲示させていただいています。

<マンション前にて>
管理人業務の第一は、毎朝8時までのロビーのモップ掛けから始まります。その後、毎日8階まで昇り降りしながらモップ掛けを致します。私自身にとっても健康的なトレーニングのようなもので、今日まで無事に業務を続けることができました。しかし勤続21年目を迎えて、ついに定年を迎える事となってしまいました。
住民の皆様とはこれからもずっと一緒に過ごしていきたかった。人生におけるとても貴重な時間でした。最後は、私から住民の皆様への思いを綴った手紙を全戸に投函させていただきました。会釈だけで10年以上口を利く事が無かった住民のお一人から、「長い間ご苦労様でした」と初めてお声掛けをいただいた時には感激しましたね。
先月をもって無事に退職となったわけですが、今でも数件の住民の方からは頼りにされて度々お電話を頂戴します。引き続き、必要とされてマンションに赴くことができるのは何より嬉しいですね。私でお力になれる事があれば、いつでもお声掛けください。
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<取材をふりかえって>
本文にもあった納谷さんの「ちょっとした心配り」の積み重ねが、マンション内に信頼の輪として広がった素敵なお話でした。納谷さんからは包括支援センターの周知活動においても、いつも丁寧な対応でご協力を賜ってきました。「見守りの輪」を広げる活動に携わる一員として、その姿勢を学ばせていただきたいと思います。
管理人引退後も、引き続きご活躍されることをお祈りしています。